SharePoint新機能!バージョン履歴の自動削除設定で運用が劇的にラクになる使い方・活用術
アドバンスド・ソリューション(ADS)
はじめに:なぜバージョン履歴の管理が必要なのか
SharePointのバージョン履歴は、ドキュメントやアイテムの変更履歴を自動保存し、過去の状態に戻したり編集内容を追跡したりできる重要な機能です。 しかし、バージョン履歴を適切に管理しないと、ストレージの無駄遣いや運用コストの増加といった問題に直面します。特に移行時や大規模運用時には、この設定を見直すことが不可欠です。
2024年に一般提供(GA)が開始されたSharePointの「バージョン履歴の自動削除(インテリジェントバージョニング)」機能は、こうした課題を解決する強力なツールです。 この機能により、従来の「手動でバージョン数や保持期間を設定」する方法に加え、Microsoftのアルゴリズムに基づいて古いバージョンを自動的に間引き、ストレージを最適化することが可能になりました。
バージョン履歴の保存設定とテナント全体のストレージ容量
バージョン履歴はストレージ容量を消費します。保存するバージョン数が多いほど、使用容量も増加します。 SharePoint P1/P2を含むBusiness/Enterpriseライセンス(一般組織)の場合、容量は以下のように計算されます。
テナント全体容量 = 1TB + 10GB × ライセンスユーザ数
基本容量では足りない場合、追加ストレージ(Office 365 Extra File Storage)を1GB単位で購入する必要があります。コストを抑えるためにも、運用ポリシーに合わせた設定が重要です。
SharePointバージョン履歴の設定方法
今回は、複数の設定単位を一括管理できるPowerShellでの設定方法をご紹介します。 推奨される運用は、「テナント全体のデフォルトは自動設定」とし、「特定のサイトやライブラリのみ手動設定」とする方法です。
自動設定(インテリジェントバージョニング)のアルゴリズム
「自動」設定を選択した場合、バージョン履歴の最大値は500(変更不可)となり、以下のロジックで間引きが行われます。
- 最初の30日間: 作成されたすべてのバージョンを保持(500カウント制限内)
- 30日〜60日間: 時間単位のバージョン(各時間の先頭バージョンのみ保持)
- 60日〜180日間: 日次バージョン(毎日の先頭バージョンのみ保持)
- 180日以降: 週次バージョン(週の初めのバージョンのみ保持、最大500に達するまで無期限)
参考:公式ガイド: SharePoint のバージョン記憶域を計画する
1. テナント全体の設定
SharePoint Online Management Shellを使用して、テナント全体のデフォルト設定を変更します。まずはSharePoint管理センターに接続します。
PowerShell
# SharePoint Online に接続
connect-sposervice -url https://<テナントドメイン>-admin.sharepoint.com
次に、自動削除(インテリジェントバージョニング)を有効化します。
PowerShell
# テナント全体のバージョン履歴設定を「自動」にする
Set-SPOTenant -EnableAutoExpirationVersionTrim $true
注意: この設定は、コマンド実行後に「新規作成」されるライブラリに対して自動的に適用されます。既存のライブラリの設定は変更されません。
2. サイト単位の設定
既存のサイトにはテナント設定が継承されないため、個別に設定が必要です。 サイトごとに利用目的やストレージ消費量が異なる場合、ここで柔軟に設定を変更します。
PowerShell
# 特定のサイトの既存ライブラリに対して「自動」設定を適用する
Set-SPOSite -Identity <サイトURL> -EnableAutoExpirationVersionTrim $true
3. 既存ライブラリ内のファイルへの適用方法(遡及適用)
設定を変更しても、すでにライブラリ内に保存されている既存ファイルのバージョン履歴は、即座には削除されません。 既存ファイルのバージョン履歴を新ルールに基づいてトリミング(削除)したい場合は、以下のコマンドでジョブを実行する必要があります。
PowerShell
# 既存ファイルのバージョン履歴をトリミングするジョブを開始
New-SPOSiteFileVersionBatchDeleteJob -Identity <サイトURL> -Automatic
注意: サイト内のファイル数によっては、処理完了まで数時間かかる場合があります。
参考:公式ガイド: PowerShell を使用してサイトのバージョン履歴の制限を管理する
注意点:アイテム保持ポリシーとの関係
Microsoft 365の「アイテム保持ポリシー(Retention Policy)」が構成されている場合、保持ポリシーの設定がバージョン履歴設定より優先されます。 保持ポリシーで特定の保存期間が指定されている場合、バージョン履歴の自動削除や上限設定が効かない(削除されない)ことがありますのでご注意ください。
自動と手動の使い分けシナリオ
- 自動設定(推奨): 新規サイトや一般的なチームサイト。テナント既定値で自動設定することで、管理者の運用負荷を軽減できます。
- 手動設定: 特定のプロジェクトや法務文書など、厳密な履歴管理が必要なサイト。手動でバージョン数を固定し、不要な履歴を確実に削除することで、コスト抑制とリスク管理を行います。
まとめ
SharePointのバージョン履歴設定を見直すポイントは以下の通りです。
- バージョン履歴の適切な設定は、運用コスト削減と情報管理強化に直結する。
- PowerShellを使えば、テナント全体・サイト単位・既存ライブラリへの適用が柔軟に行える。
- アイテム保持ポリシーが優先されるため、ガバナンス設計と併せた確認が必要。
- 基本は「自動」、重要サイトは「手動」のハイブリッド運用がおすすめ。
公式ガイドや今回の手順を参考に、ぜひ最適なストレージ運用を目指してください。
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